《食べ合わせの妙》
寒い冬、冷えてくると熱燗と良く合うおでん。おでんが食べられることを考えると冬もいいなあーと思ってしまいます。身体の弱る冬に食べるだけあって、おでんはものすごく身体に優しい食べ物ですよね。何と言っても具が沢山入っていて、しかも野菜、肉類、魚介類、根菜類などをバランス良く鍋に放り込めば栄養的にもまさに無敵と言えるでしょう。煮ることで具も柔らかくなるし、体も温まるので、まさに冬に食べてくれと言わんばかりです。その中にあって、今回の主役、大根はどんな働きがあるのでしょうか。
大根は奈良時代、西暦720年頃に作られた日本書紀に記録があることから、日本にはかなり昔に到来していたようです。そのころ大根は「おおね(大根)」とか「すずしろ」と呼ばれていて、「だいこん」と呼ばれはじめてからは未だそれほど経っていないようです。エジプトでは何と4、700年も前から利用されていたようですが、原産地は中央アジアという説や地中海沿岸という説などがあり、よく分からないですね。
さて、大根はいろいろとからだにいいもので、繊維質などが消化器官に働きかけ体調を整えてくれるのですが、あまりビタミンやミネラルなどの栄養はありません。このあまり栄養のない大根ですが、わずかに含まれているビタミンC(とは言ってもキャベツの1/3の15mg/100g)も、熱に弱いため、おでんにすると、ほとんどが破壊されてしまいます。つまり大根をおでんに入れても、そこからとれる栄養はほとんどなく、何の価値もないかに思えます。
しかし、しかし、しかしですよ。皆さん、大根を入れないでおでんを作ったことがありますか?ええ。ないでしょう。実は、おでんに大根を入れないで煮込むと、具を煮込んだ分だけ具が固くなってしまうことがあるのです。特に、でんぷんやタンパク質を含む貝類やイカ、タコのような動物性の具などはゴムのように固くなって、食感がガクンと落ちてしまいます。はんぺんなども、白身魚のすり下ろしが原料なので、要注意です。また、固くなったタコやイカは、かんで飲み込むのが大変になるばかりか、胃腸での消化も非常に悪くなり、やっとこさ飲み込んでも良質のタンパク質はほとんど消化、吸収されずに腸を通過して排泄されてしまいます。全部通過してしまうのなら別に問題ないのですが、腸壁にこびりついて、宿便の原因となったり、さらには大腸ガンの原因にまでなってしまう可能性もあります。
大根には、いろいろな酵素が含まれています。アミラーゼやオキシターゼは、でんぷんを分解して、力の源の糖にしてくれますし、カタラーゼは脂肪、オキシターゼは蛋白質を分解して体内で有効に働くアミノ酸にしてくれます。つまりこれらの酵素は、大根からにじみ出たあと、おでんの汁をさまよって、イカやタコ、貝などのタンパク質や脂肪などに働きかけて、固くなるのを防ぐどころか、胃腸で消化しやすく分解してくれるのです。つまり、朝からおでんを煮込んでいるおでん屋の具がおいしく食べられたり、残ったおでんを次の日温め直しても、問題なくおかずにすることが出来るのは、大根様のお陰だったのです。
また、じっくり煮込むほど、おでんに入れた他の具の栄養がどんどん汁に溶けだしてしまうのは、皆さんイメージできると思いますが、これってすごくもったいないですよね。大根はご存知の通り、水気が多いので、その豊富な水分とおでんの汁が入れ替わって、もともと淡泊な味しかしない大根が、豊かな味を持つようになります。つまり、大根を一切れ食べただけで、汁に溶け出たさまざまな栄養をたっぷりと取ることが出来るのです。
と、いうことで、大根はからだにもいいし、おでんの味をより複雑に深めてくれる働きをしてくれていたのです。
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