《食べ合わせの妙》

その10 『カレーにリンゴ』

「リンゴとはちみつ、ハウスバーモントカレー。」このコマーシャル、以前、よくやってましたよね。今回はそのカレーライスの話です。日本中で、いや、世界中で本当に人気のある食事ですよね。特に日本はカレーの消費量がインドに次いで世界2位という、大のカレー大好き国民です。私も大好きですが、中には週に1回は、夜ご飯がカレーなんて人は当たり前。余ったカレーを翌日の朝、夜と2度、3度食べる御仁なんてざら!とどめにお昼ご飯にも定食屋でカレーを食べる究極のカレー好き、というよりカレー中毒の輩が結構いるんじゃないですか。

さて、カレーは皆さんもご存知の通り、インドが発祥の地で、タミール語で「ソース」や「汁」の意の「kari」が語源です。その「kari」が、イギリスを経て、日本にやってきたのですが、もともとカレーは今スーパーやコンビニで売られているカレールーのように、でんぷん質でルー状にしたものではなく、バターと共にじっくり火を通してとろみをつけたものでした。

その黄色成分はサフランやパプリカ、辛味や香りはコショウ、トウガラシなどの各種スパイスを用いて作られています。日本では、カレーライスにお肉やニンジン、玉ねぎにジャガイモ、人によってはナスやトマトを加える場合もあると思います。(先日、我が家でも、カボチャを入れたカレーライスを作りましたが、甘さが出てとても旨かった。)

ニンジンはシソ、パセリに次いでβカロチンが多く、しかも油で炒めるので、吸収しやすい形で食べられます。さらにニンジンは、ビタミンC以外のビタミンや、カリウムなどのミネラルも含まれ、食物繊維が多いのも特徴です。ジャガイモはニンジンにはないビタミンCのほか、ビタミンBやカリウム、加えてコレステロールを下げるグリシニンが含まれています。玉ねぎもビタミンCなどが多く、また、カリウムなどのミネラル、食物繊維、さらに血栓を溶かすサイクロアイリンが多く含まれています。

カレー粉自体のスパイスなどには、ビタミンも少なく、わずかなβカロチンが入っているだけです。しかし、こんなに栄養たっぷりの具を沢山入れたカレールーを、炊立てのご飯にかけるのだから、カレーライスは育ち盛りの子供には栄養たっぷりでおいしく、最高のごちそうですよね。

しかーし!喜んでばかりではいられません。カレーライスは皆さんもご存知の通り、油っこいし、塩っぽいのです。つまり、脂質や塩分が非常に多く、しかも糖分(でんぷん)も非常に多いのです。それぞれカレールーに35.2%、10.2%、42.9%も含まれています。脂質はコレステロールや動脈硬化の原因となりますし、塩分は高血圧や、脳卒中の原因として有名です。だけどコレステロールは具に含まれるグリシニンや食物繊維が分解、排泄を助けるし、塩分も、カリウムが排泄を促すので、完璧ではないにしても、まだよいとして、問題は42.9%の糖質です。

糖質は、口や、小腸から分泌される酵素によって分解され、糖質としては最も小さいグルコースになります。グルコースは、腸から吸収されると、肝臓や筋肉でさらに合成、分解されて、グリコーゲンとなり、肝臓に貯められます。しかし、肝臓による、グリコーゲンの貯蔵量にも限りがあり、余ったグルコースは血中を中性脂肪となって巡ります。そしてもちろん、血液にグルコース(糖質)が多くなると高血糖、糖尿病へと進行します。

そこで今回登場していただくリンゴ大先生は、糖の吸収を抑えて、血液中の糖濃度を抑えて下さる、えらーいお方なのです。ハイ!それではリンゴ大先生、宜しくお願い致します。

『うむ、ワシはリンゴじゃ。すごくメジャーじゃろ。アダムとイブのリンゴ、ウィリアムテルのリンゴ、白雪姫のリンゴ、そしてニュートンの万有引力のリンゴと、リンゴは世界中の物語、逸話にでてくるくらい、生活に密着していて、カレーにも勝るとも劣らない、といった感じじゃろ。フォフォフォフォッ。それもそのはず、ワシらは、ブドウ、バナナなどと並んで世界4大果実と呼ばれていて、皮ごと食べられる果実の代表でもあるのじゃ。我が一族の歴史は古く、原産地はコーカサス地方や小アジア地方から民族移動と共に各地に広がり、ヨーロッパでは4000〜5000年も前から栽培がされていたのじゃ。今、君たちが食べているワシらは、17世紀にアメリカに渡った際に、実が大きくなるように品種改良を受けたものが、明治5年前後に輸入されて来たものじゃ。しかし、平安時代には中国から、また、1860年代にはヨーロッパ系のリンゴが日本に輸入されていたのじゃ。』

『こんなに甘くておいしいワシらじゃが、糖分は13%と考えられているほど多くないのじゃ。控えめなのじゃ。一方で、さまざまな生理活性作用があるリンゴ酸や、クエン酸などの有機酸が含まれているため、独特の酸味で食欲がそそられるのと相まって、病後の回復時によくリンゴジュースが飲まれるのは君たちも知っとるじゃろ。また、ワシらは食物繊維が豊富で、胃腸にすごくよいことは有名じゃが、水溶性の繊維の一つ、ペクチンが今回の話のクライマックスじゃ。』

『ペクチンは、ワシらの細胞膜などにあり、ワシの体重の0.7%を占めておる。ペクチンは粘度が高く、リンゴジャムなどのドロドロは、実はペクチンの働きによるものだったのじゃ。つまり、ペクチンによって粘度の高まった食物は、胃から腸への移動が緩慢になり、糖分などの栄養の吸収がじっくり行われるため、食後に急激に血糖が上がるのを防いでくれるのじゃ。また、ペクチンは糖と結合して、糖の吸収速度そのものを緩やかにしてくれるのじゃ。』

『「0.7%しかないんじゃねぇ」という声が聞こえてきそうじゃが、ペクチン1に対して、糖30〜100以上の割合で結合するから、オッケーオッケー全然オッケーなのじゃ。ちょーべりぐ、なのじゃ。効果は倍増なのじゃ。フォフォフォ・・ムガ!』

先生の入れ歯がはずれそうなので、これでとっと引っ込んでもらいましょう。なんとかお分かりいただけたでしょうか。カレーライスにリンゴを入れると甘みが増して、子供たちにとって、また、辛味が苦手な方にとって、カレーライスが食べやすくなります。しかしそれにも増してニンジンや、ジャガイモなどでは補いきれないカレーの弱点をカバーするという意味で、カレーライスにリンゴを入れるというのはすばらしい食べ合わせだと思いませんか?もし、ここまで考えて、カレーのルーにリンゴを入れることを考えたのだとしたら、ハウス食品もなかなかやりますねー。

ただ、カレーライスは、いろんな栄養がたっぷりと含まれている料理ですが、脂質や塩分、そして糖質がかなり多いのは事実です。だから、カレーが好きで週に3回も4回もカレーライスを食べる方は、適度な運動をして、脂質や糖をエネルギーとして燃やし、塩分を積極的に排泄することを心がけましょうね。

ちなみに、リンゴはバラ科の植物だそうです。

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